いろいろな中村雅楽:『車引殺人事件』の尾上鯉三郎の場合(後篇)

昭和35年4月の新宿第一劇場の『車引殺人事件』上演に際して、筋書には、劇評を書かなければならないのが目下の頭痛の種だ、と書いていた戸板康二であったが、結局はこの興行の劇評は辞退して、他の人に書いてもらったという。と、東京新聞は現時点では未確…

いろいろな中村雅楽:『車引殺人事件』の尾上鯉三郎の場合(前篇)

老優・中村雅楽を探偵役にすえた戸板康二の推理小説の第一作『車引殺人事件』が江戸川乱歩の推挙で、雑誌『宝石』昭和33年7月号に掲載され、好評をもって迎えられ、乱歩の絶妙な後押しもあって、以降とんとん拍子に新作が『宝石』に掲載されてゆき、34年5…

小池朝雄の一周忌本『断想』のこと。戸板康二を通して、新劇人・小池朝雄に思いを馳せる。

シネマヴェーラの中島貞夫特集で初めて見た『現代やくざ 血桜三兄弟』(昭和46年11月封切・東映)がとっても面白かった! 思わず2回見に行ってしまった! 前々からかっこいいとは思っていたけれども、それにしても小池朝雄のなんとかっこいいこと! 実にい…

戸板康二の三田文科の友人・安田晃と昭和11年の「尾上菊五郎」にまつわるメモ。

『四季の味』第26号(昭和54年7月発行)の「随筆集 日日これ好日」のページに掲載の、戸板康二の「食物との出会い」(『目の前の彼女』所収)に以下の一節がある。 慶応の予科の時、のちに朝日に入社してビルマで戦死した安田晃という独文志望の学生と親し…

昭和54年夏の季刊『四季の味』を入手して、戸板康二の食味エッセイに思いを馳せる。

先週は一週間夏休みだった。そんな灼熱の日々の折も折、戸板康二のエッセイが掲載されている『四季の味』第26号(昭和54年7月7日発行)を入手して、大喜びだった。32年前の夏の『四季の味』の表紙はまっかなお皿に乗ったスイカ! 季刊『四季の味』第26号・…

洗足駅前でワインを飲んで、駅前のポストと谷口理容室に思いを馳せる。

土曜日、日没後にひさしぶりに東急目黒線に乗って洗足駅で下車。明日はいよいよ夏休み最終日、せめてもの気晴らしにワインを飲んでゆくことにする。戸板さん自身が、「品川区と私」(初出:『東京人』1992年11月号→『六段の子守唄』所収)という最晩年の文章…

続・早稲田大学演劇博物館の《初代中村吉右衛門展》にまつわるメモ。

小宮豊隆が『中村吉右衛門論』を書いた明治44年夏のちょうど百年後の2011年の夏、早稲田大学演劇博物館にて《初代中村吉右衛門展》が開催される! と一人で興奮しているうちに、あっという間に展覧会初日がやって来て、その素晴らしさは想像していたはずなの…

昭和28年11月の歌舞伎座で撮影の記録映画、吉右衛門の『盛綱陣屋』を見られずの記。

早稲田大学演劇博物館で開催の《初代中村吉右衛門展》に関連して、「初代中村吉右衛門映画祭2」として、去る8月2日に昭和28年11月撮影の『盛綱陣屋』が上映された。戸板康二が製作に関わっている吉右衛門の記録映画『盛綱陣屋』はわたしの長年の念願だっ…

震災前の月刊グラフ誌『劇』と『光村利藻伝』。光村印刷と明治製菓宣伝部員・戸板康二。

演博で開催中の《初代中村吉右衛門展》で展示されているのを見て気になった、大正11年12月に創刊された東京俳優組合事務所発行の『月刊 劇』が1冊数百円で売っていたので、図録の刊行がなさそうだし、このたびの吉右衛門展のよき記念になるかもしれぬと、軽…

『新派名優 喜多村緑郎日記』全3巻(八木書店刊)を読んで、老優中村雅楽をおもう。

昭和5年から昭和12年にかけての全日記を収録している『新派名優 喜多村緑郎日記』全3巻が、去年から今年にかけて八木書店より刊行された。これはなにがなんでも書架に収めねばならぬとすぐさま思ったものの、高価な定価ゆえ買うタイミングを逸してしまって…

早稲田大学演劇博物館で《初代中村吉右衛門展》を見る。

開催を知ったときから待ち遠しくてたまらなかった演博の初代吉右衛門展は、今月7月2日を初日に、現在絶賛開催中(会期は来月8月7日まで)。ソワソワと毎週見物に出かけて、この三連休で三回目の見物をしたところ。その素晴らしさは十分予想していたはず…

戸板康二と三島由紀夫:昭和45年の「ゴーゴー」と昭和22年7月東京劇場の梅玉の玉手御前

昭和40年4月から昭和46年12月にかけて全350話放送されていた TBS の『ザ・ガードマン』というテレビドラマがあんまりバカバカしく、ここまでバカバカしいとかえって感動的ですらあると、ついたまに CS の放送を録画して見てしまい、そのたびに脱力すること…

小林正樹『燃える秋』を見て、三越の岡田茂と戸板康二の三田時代をおもう。

先月、銀座シネパトスの小林正樹特集で『燃える秋』(昭和53年12月封切)を見た。二本立て上映で、翫右衛門主演の『いのち・ぼうにふろう』(昭和46年9月封切)の方が目当てだったのだけど、なんの予備知識もなく見ることになった『燃える秋』は戸板康二を…

早稲田大学演劇博物館の《初代中村吉右衛門展》の開催を記念して、戸板康二と小宮豊隆の交流メモ。

いよいよ、来る7月2日(土曜日)から早稲田大学演劇博物館で《初代中村吉右衛門展》が開催される(http://www.waseda.jp/enpaku/special/2011kichiemon01.html)。会期は8月7日(日曜日)まで。約1カ月間、何度も見物に足を運ぶのは必至だーと、まだ始…

戸板康二が幼年時代を過ごした渋谷メモ。代々木山谷と渋谷永住町。

宮脇俊三著『昭和八年 澁谷驛』(PHP研究所、1995年12月)を繰っていたら、「昭和初期の時代」と題された自伝的文章の以下のくだりに、さっそく「おっ」だった。 昭和七年の四月から幼稚園に行くことになった。 その幼稚園は、私の家から五分ほど歩いた坂の…

民芸のオニールを見に砂防会館に向かう途中、戸板康二は渋谷駅前で古川ロッパに遭遇する。

戸板康二が古川緑波と親しくなったのは、渋谷駅前の酒場「とん平」で知り合ったのがきっかけだった。戸板さんは「とん平」を舞台にしたたのしい話をたくさん書き残しているけれども、さてさて、『あの人この人』所収の「古川緑波の冗句」にこんなくだりがあ…

福原麟太郎による、戸板康二『忠臣蔵』紹介メモ

先月は、岩波文庫の新刊、サミュエル・ジョンソン/朱牟田夏雄訳『幸福の探求 アビシニアの王子ラセラスの物語』を機に、長年の懸案だった、福原麟太郎著『ヂョンソン』新英米文学評伝叢書(研究社、1972年)を精読する運びとなって、嬉しいことであった。勢…

品川から京浜急行で旧東海道。第14回みつわ会公演「久保田万太郎作品 その二十一」を見る。

夕刻、大急ぎで外に出て、JRの有楽町駅へ突進。品川駅で京浜急行の各駅停車に乗り換えて、二駅目の新馬場で下車。毎年3月の恒例行事、みつわ会の「久保田万太郎作品」公演の、今日は初日なのだった。品川駅から乗る京浜急行の各駅停車のひなびた風情が大…

5年ぶりに戸板康二のお墓参り。鶴見線に乗ったあと、総持寺へ。

正午過ぎ、秋葉原で乗り換えて、京浜東北線に揺られてトロトロと、鶴見へ向かう。 電車が蒲田駅を出て多摩川を渡り終えたところに、かつて明治製菓の川崎工場があった。現在は「ソリッド・スクエア」という名のビルになっている。去年の明治節の休日、11月に…

日生劇場で音羽屋の『摂州合邦辻』を見る。

上演を知ったときから心待ちにしていた「日生劇場十二月大歌舞伎」。村野藤吾の建築が目にたのしい日生劇場はたまにしか観劇の機会がめぐってこないので、建築見物という点だけでも貴重だし、それになによりも、合邦の通しを見ることができるというのが嬉し…

早稲田大学演劇博物館で《二世市川左團次展》を見る。

ここ数カ月というもの、開催を心待ちにしていた演博の左團次展。先月末にイソイソと見物に出かけて以来、今日まで3回見物している。今年生誕130年の左團次、初日の10月19日は左團次の誕生日。最終日の12月5日まで、あと1回か2回は見に行けたらいいなと思…

東京宝塚劇場で花組公演『麗しのサブリナ』を見たあと、教文館でコーヒーを飲む。

雨なので地下道をつたって、日比谷界隈へ向かう。日生劇場のところで地上に出て、午前11時過ぎ、東京宝塚劇場の座席で母と落ち合う。宝塚観劇意欲がこのところ急激にしぼんでしまい、自分でも残念至極。しかーし、いざ見に行くと毎回それなりにたのしく、来…

吉右衛門の『沼津』のあとの幕間、新橋演舞場でコーヒーを飲む。プラトン社の『女性』の「劇場スケッチ」。

今日は待ちに待った、吉右衛門の『沼津』と仁左衛門の『荒川の佐吉』だ、わーいわーいと日傘片手に意気揚々と外出し、いつものとおりに有楽町線で新富町下車。京橋図書館に本を返してまた借りて、タリーズで休憩。今日は母と待ち合わせての芝居見物で、今回…

「シアターΧ名作劇場」で久生十蘭と灰野庄平の戯曲を見る。

6時過ぎ、秋葉原で総武線に乗り換えて、両国へ。総武線で隅田川を渡る瞬間がいつも大好き。電車が浅草橋を過ぎたところで、さらに窓の近くへ歩を進める。このところ、すっかり日が短くなったなアとしんみりしながらテクテク歩いて、シアターΧにて、「第31回…

新橋演舞場へ海老蔵の『義経千本桜』を見にゆく。

休日だけどいつものとおりに6時起床。NHK-FM の「バロックの森」のモンテヴェルディに耳を傾けながら、いい気分で弁当と朝食をこしらえたところで、ふと本日の新橋演舞場は海老蔵の『義経千本桜』であったことに気づいた。週明けからずっと、今週末の芝居見…

内田吐夢の『警察官』の「東京昭和8年」に陶然。写真家としての杵屋栄二。

先週の水曜日の夕刻、《内田吐夢没後40年回顧上映》開催中の新文芸坐へ、『限りなき前進』と『土』の二本立てを見に行った。平日の日没後の新文芸坐行きはいつも丸ノ内線。御茶ノ水駅直前の丸ノ内線の車窓から見える神田川と聖橋の風景はいつ見ても心躍る。…

東京宝塚劇場で宙組公演『TRAFALGAR』『ファンキー・サンシャイン』を見る。

正午前、丸ビルで母と待ち合わせて、食事と買い物と喫茶と歩行を経て、午後4時前、東京宝塚劇場に到着。 このところ、宝塚にそこはかとなく飽きているのは否めないのだったが、今年1月にひさびさに見た宙組の『カサブランカ』が素晴らしかったので、今回は…

鍛冶橋通りを歩いて、戦前の明治製菓をおもう。『狂った一頁』の井上正夫に見とれる。

午後6時過ぎ、丸の内仲通りを右折して、鍛冶橋通りを直進して、フィルムセンターに向かって早歩き。「ぴあフィルムフェスティバル」でしばらく中断していたフィルムセンター通いが再開して嬉しい。来週は一週間夏休みで嬉しさも倍増だ。わーいわーいと鍛冶…

明治製菓の神津牧場の絵葉書。

戦前の明治製菓にまつわる紙ものを集めるのが、ここ数年来のおたのしみ。最近買って嬉しかったのが、明治製菓経営の神津牧場の絵葉書。 絵葉書《ジャージー種牛 明治製菓神津牧場》(明治製菓株式会社発行)。添えられてある米川稔の短歌、「しばらくは天つ…

『事件記者』の宮阪将嘉を見て、ムーラン・ルージュをおもう。

今月は映画館に頻繁に出かけた。フィルムセンターでは、伊藤大輔の無声映画2本立て『斬人斬馬剣』(松竹下加茂・昭和4年)と『忠治旅日記』(日活大将軍・昭和2年)のモダーン時代劇がすばらしく、何日たっても大興奮だった。『忠治旅日記』の伏見直江を…