先日、神保町シアターの高峰秀子特集で、長年の懸案だった『チョコレートと兵隊』を見ることができた。とにかくも、やっと実見できた喜びが第一。その記念に、以下、『チョコレートと兵隊』の覚書とともに、戸板康二の明治製菓宣伝部時代にちょいと思いを馳…
子どもの頃からの芝居好きだった戸板青年が新劇に出会うのは、昭和7年、慶應義塾予科に入学以降のこと。戸板青年の心をまっさきに揺さぶったのは飛行館の築地座の田村秋子だったようであるが、昭和9年に新協劇団が旗揚げされると滝沢の演技に心酔するよう…
去年9月、ハヤカワ演劇文庫で岸田國士作品集の第1集が出ているのを本屋で発見したときはとても嬉しくて、ガバッと買ってホクホクと1篇ずつじっくりよみふけった。前からそこはかとなく気になっていたハヤカワ演劇文庫を読んだのはそのときが初めて。手に…
お正月の記憶が薄れかけてくるころになると、毎年ふいに、野菜売場で菜の花を見かけるようになる。野菜売場で菜の花が初めて視界に入ったときの毎年の歓喜! 毎年2月は毎日のように菜の花を食べている。まだまだ寒いのに春が近づいてきて、強風吹き荒れたり…
先月講談社文芸文庫の新刊として、戸板康二の『丸本歌舞伎』が刊行された。2008年5月に犬丸治さんの編集で『思い出す顔 戸板康二メモワール選』が出て3年過ぎたところで、まさかの2冊目の戸板康二! と歓喜。水上瀧太郎、久保田万太郎、奥野信太郎、池田…
昭和35年4月の新宿第一劇場の『車引殺人事件』上演に際して、筋書には、劇評を書かなければならないのが目下の頭痛の種だ、と書いていた戸板康二であったが、結局はこの興行の劇評は辞退して、他の人に書いてもらったという。と、東京新聞は現時点では未確…
老優・中村雅楽を探偵役にすえた戸板康二の推理小説の第一作『車引殺人事件』が江戸川乱歩の推挙で、雑誌『宝石』昭和33年7月号に掲載され、好評をもって迎えられ、乱歩の絶妙な後押しもあって、以降とんとん拍子に新作が『宝石』に掲載されてゆき、34年5…
シネマヴェーラの中島貞夫特集で初めて見た『現代やくざ 血桜三兄弟』(昭和46年11月封切・東映)がとっても面白かった! 思わず2回見に行ってしまった! 前々からかっこいいとは思っていたけれども、それにしても小池朝雄のなんとかっこいいこと! 実にい…
『四季の味』第26号(昭和54年7月発行)の「随筆集 日日これ好日」のページに掲載の、戸板康二の「食物との出会い」(『目の前の彼女』所収)に以下の一節がある。 慶応の予科の時、のちに朝日に入社してビルマで戦死した安田晃という独文志望の学生と親し…
先週は一週間夏休みだった。そんな灼熱の日々の折も折、戸板康二のエッセイが掲載されている『四季の味』第26号(昭和54年7月7日発行)を入手して、大喜びだった。32年前の夏の『四季の味』の表紙はまっかなお皿に乗ったスイカ! 季刊『四季の味』第26号・…
土曜日、日没後にひさしぶりに東急目黒線に乗って洗足駅で下車。明日はいよいよ夏休み最終日、せめてもの気晴らしにワインを飲んでゆくことにする。戸板さん自身が、「品川区と私」(初出:『東京人』1992年11月号→『六段の子守唄』所収)という最晩年の文章…
小宮豊隆が『中村吉右衛門論』を書いた明治44年夏のちょうど百年後の2011年の夏、早稲田大学演劇博物館にて《初代中村吉右衛門展》が開催される! と一人で興奮しているうちに、あっという間に展覧会初日がやって来て、その素晴らしさは想像していたはずなの…
早稲田大学演劇博物館で開催の《初代中村吉右衛門展》に関連して、「初代中村吉右衛門映画祭2」として、去る8月2日に昭和28年11月撮影の『盛綱陣屋』が上映された。戸板康二が製作に関わっている吉右衛門の記録映画『盛綱陣屋』はわたしの長年の念願だっ…
演博で開催中の《初代中村吉右衛門展》で展示されているのを見て気になった、大正11年12月に創刊された東京俳優組合事務所発行の『月刊 劇』が1冊数百円で売っていたので、図録の刊行がなさそうだし、このたびの吉右衛門展のよき記念になるかもしれぬと、軽…
昭和5年から昭和12年にかけての全日記を収録している『新派名優 喜多村緑郎日記』全3巻が、去年から今年にかけて八木書店より刊行された。これはなにがなんでも書架に収めねばならぬとすぐさま思ったものの、高価な定価ゆえ買うタイミングを逸してしまって…
開催を知ったときから待ち遠しくてたまらなかった演博の初代吉右衛門展は、今月7月2日を初日に、現在絶賛開催中(会期は来月8月7日まで)。ソワソワと毎週見物に出かけて、この三連休で三回目の見物をしたところ。その素晴らしさは十分予想していたはず…
昭和40年4月から昭和46年12月にかけて全350話放送されていた TBS の『ザ・ガードマン』というテレビドラマがあんまりバカバカしく、ここまでバカバカしいとかえって感動的ですらあると、ついたまに CS の放送を録画して見てしまい、そのたびに脱力すること…
先月、銀座シネパトスの小林正樹特集で『燃える秋』(昭和53年12月封切)を見た。二本立て上映で、翫右衛門主演の『いのち・ぼうにふろう』(昭和46年9月封切)の方が目当てだったのだけど、なんの予備知識もなく見ることになった『燃える秋』は戸板康二を…
いよいよ、来る7月2日(土曜日)から早稲田大学演劇博物館で《初代中村吉右衛門展》が開催される(http://www.waseda.jp/enpaku/special/2011kichiemon01.html)。会期は8月7日(日曜日)まで。約1カ月間、何度も見物に足を運ぶのは必至だーと、まだ始…
宮脇俊三著『昭和八年 澁谷驛』(PHP研究所、1995年12月)を繰っていたら、「昭和初期の時代」と題された自伝的文章の以下のくだりに、さっそく「おっ」だった。 昭和七年の四月から幼稚園に行くことになった。 その幼稚園は、私の家から五分ほど歩いた坂の…
戸板康二が古川緑波と親しくなったのは、渋谷駅前の酒場「とん平」で知り合ったのがきっかけだった。戸板さんは「とん平」を舞台にしたたのしい話をたくさん書き残しているけれども、さてさて、『あの人この人』所収の「古川緑波の冗句」にこんなくだりがあ…
先月は、岩波文庫の新刊、サミュエル・ジョンソン/朱牟田夏雄訳『幸福の探求 アビシニアの王子ラセラスの物語』を機に、長年の懸案だった、福原麟太郎著『ヂョンソン』新英米文学評伝叢書(研究社、1972年)を精読する運びとなって、嬉しいことであった。勢…
夕刻、大急ぎで外に出て、JRの有楽町駅へ突進。品川駅で京浜急行の各駅停車に乗り換えて、二駅目の新馬場で下車。毎年3月の恒例行事、みつわ会の「久保田万太郎作品」公演の、今日は初日なのだった。品川駅から乗る京浜急行の各駅停車のひなびた風情が大…
正午過ぎ、秋葉原で乗り換えて、京浜東北線に揺られてトロトロと、鶴見へ向かう。 電車が蒲田駅を出て多摩川を渡り終えたところに、かつて明治製菓の川崎工場があった。現在は「ソリッド・スクエア」という名のビルになっている。去年の明治節の休日、11月に…
上演を知ったときから心待ちにしていた「日生劇場十二月大歌舞伎」。村野藤吾の建築が目にたのしい日生劇場はたまにしか観劇の機会がめぐってこないので、建築見物という点だけでも貴重だし、それになによりも、合邦の通しを見ることができるというのが嬉し…
ここ数カ月というもの、開催を心待ちにしていた演博の左團次展。先月末にイソイソと見物に出かけて以来、今日まで3回見物している。今年生誕130年の左團次、初日の10月19日は左團次の誕生日。最終日の12月5日まで、あと1回か2回は見に行けたらいいなと思…
雨なので地下道をつたって、日比谷界隈へ向かう。日生劇場のところで地上に出て、午前11時過ぎ、東京宝塚劇場の座席で母と落ち合う。宝塚観劇意欲がこのところ急激にしぼんでしまい、自分でも残念至極。しかーし、いざ見に行くと毎回それなりにたのしく、来…
今日は待ちに待った、吉右衛門の『沼津』と仁左衛門の『荒川の佐吉』だ、わーいわーいと日傘片手に意気揚々と外出し、いつものとおりに有楽町線で新富町下車。京橋図書館に本を返してまた借りて、タリーズで休憩。今日は母と待ち合わせての芝居見物で、今回…
6時過ぎ、秋葉原で総武線に乗り換えて、両国へ。総武線で隅田川を渡る瞬間がいつも大好き。電車が浅草橋を過ぎたところで、さらに窓の近くへ歩を進める。このところ、すっかり日が短くなったなアとしんみりしながらテクテク歩いて、シアターΧにて、「第31回…
休日だけどいつものとおりに6時起床。NHK-FM の「バロックの森」のモンテヴェルディに耳を傾けながら、いい気分で弁当と朝食をこしらえたところで、ふと本日の新橋演舞場は海老蔵の『義経千本桜』であったことに気づいた。週明けからずっと、今週末の芝居見…