東京宝塚劇場で星組公演『ハプスブルクの宝剣』を見る。


昨日はうっかりワインを飲み過ぎてしまったと、ノソノソと起きて出してみると、窓のそとは雨がザアザア。ますます士気が下がったところで、ラジオのスイッチをつけると、ちょうど NHK ラジオの「音楽の泉」がはじまったところ。シューマンの《女の愛と生涯》を何年ぶりかで聴きながら、新聞を眺める。音楽が終わったところで、ノロノロと身支度を開始して、外出。


東京宝塚劇場で母と落ち合って、星組公演『ハプスブルクの宝剣』を観劇。星組は安蘭けい主演の『スカーレット・ピンパーネル』以来。その間、トップは柚希礼音に交替し、布陣がさま変わりしていて、わたしのなかでは誰が誰だかほとんどわからない状態に舞い戻ってしまった。とりあえず、開演前の組長さんの挨拶が感じがよくて、好感を持つ。演目は、いかにも星組っぽい派手な衣裳の歴史もの。宝塚を見ていると、十数年前の大学受験の頃の世界史マニアの血が騒いでなつかしい。この時代のヨーロッパの情勢は……などと追憶にひたりつつ、豪華絢爛な舞台を眺めていると、次第に児童よみものを読んでいた少女時代の気分を鮮やかに思い出したりもして、ちょっとノスタルジック。宝塚を見ていると、多分に子供時分の少女小説的気分を思い出して、ノスタルジックになることがままあって、そんなところも宝塚のたのしいところなのだなあと、ぼんやり舞台の進行を眺める。

 

というように、そこそこおもしろかったものの、前回の『カサブランカ』と比べると、演出面でちょいと単調だったのか、全体的にはどうもあまり乗れなくて、残念。途中のハンガリーの場面はなかなかたのしく、ブラームスのハンガリー舞曲が流れたらもっと嬉しかった。歴史ものらしくこれでもかと派手な衣裳が満載ななか、主演の柚希礼音は黒のシンプルななりしている、というコントラストがおもしろかった。途中、白髪の縦ロール姿が決まっている人が素敵すぎるッ! と気になって、幕間にイソイソとプログラムの立ち読みにでかけると、専科の一樹千尋さんだった。宝塚ではいつも、脇を固めるベテランが琴線に触れるのであった。

 

幕間のあとのショーでは、ポエム風ナレーションのせいか、うっかり途中から寝てしまい、目を覚ますと、主演男役と娘役がオルゴールのようにクルクルとまわっていた。いつも無心で堪能の宝塚のショーで、よりによって寝てしまうとは! これほどむなしいことが他にあるだろうかとうなだれる(昨日の深酒を大いに反省)。最後、大階段を降りてくるところは東映時代劇のクレジットが立体化したような序列感が味わい深く、名前がわかったらさぞかしおもしろいのだろうなあといつも思う。


などと、天候と体調のせいで、全体的にはいまいちテンションの低い観劇になってしまったのはもったいなかった。次回の雪組、花組のチラシを手にして、今度はきちんと観劇に集中するのだと目には炎がメラメラ。(花組の『虞美人』のチラシが思いっきり「つまらなそう!」オーラがただよっていて、かえってたのしみ)。


宝塚のあとはいつものように帝国ホテルのとらやで休憩するのをたのしみしていたのだけれど、ショーで寝てしまったのでコーヒーで目を覚ましたくなり、ウエストへゆく。好物のジンジャータルトをひさしぶりに食べて、体調回復。コーヒーを飲んですっかり目が覚めたところで、デパートへ日用品の物色へとゆく。いつも日曜日はあっという間に終わる。

 


「モダン都市」資料としての宝塚、ということで、画像は『アサヒカメラ』昭和12年2月発行(第23巻第2号)所載「渡辺義雄傑作集」より、《スポットライト》。前のページには吉田栄三の楽屋写真。