戸板康二の仕事・著書リスト


戸板康二の仕事・著書リスト(http://www.ne.jp/asahi/toita/yasuji/list/a/01/index.html)」に『中村雅楽探偵全集付録』と『名優のごちそう』を追加。

 


創元推理文庫の『中村雅楽探偵全集』全5巻の帯に「全巻ご購入の方にプレゼント実施」とある応募券を計5枚を葉書に貼付して投函して、送られてきた小冊子の『中村雅楽探偵全集付録』。間然するところのない完成度の高い小冊子。創元推理文庫の中村雅楽探偵全集はなにもかもが「完璧!」だった。

 

編者の日下三蔵さんの「楽屋裏より」によると、すべての巻が増刷したとのこと、たいへんよろこばしい。さらに、《創元推理文庫から引き続きノン・シリーズの戸板ミステリをまとめたシリーズを出せることになりました。<戸板康二推理小説全集>(仮)と題して、雅楽の登場しない作品を集大成するつもりです。》という一節があり、夢はふくらむばかり。刊行を気長に待ちたい。というか、そういう案が日下三蔵さんの中にあるというだけでも、もう十分すぎるくらいに嬉しい(ジーン)。

 

戸板康二著書の最新刊は、今年9月の刊行。『演劇界』初出のシリーズものの歌舞伎読み物の集大成。いままでずっと、三月書房刊行のエッセイ集に収録されていたこれらの読み物が大好きで、『演劇界』初出の戸板読み物について考えてみたいなとぼんやりと思っていたものだった。こうして1冊の本にまとまってあらためて読み返してみると、戸板康二の円熟ぶりがしみじみすばらしくて、至福の思いで読みふけってしまって、戸板ファンの初心にかえった思いだった(造本については何も申しませぬ。本として実現しているだけで十分)。岩波現代文庫になった『歌舞伎ちょっといい話』のもとになった、歌舞伎座の筋書きに連載していた文章と同時期の文章を網羅している恰好で、セットで読み返して、急に歌舞伎気分が盛り上がってきたのが嬉しかった。


今回読み返して、とりわけハマったのが、「脇役の名舞台」。昭和4年8月所演の真山青果『唐人お吉』における、市川荒次郎の「通訳官ヒュースケン」が妙に気になってしまって、岡鬼太郎の劇評を参照すると(『歌舞伎と文楽』128ページ)、《荒次郎のヒュウスケンは、恐らく日本一の適り役》とあって、まあ! と、ますますニヤニヤ。ああ、舞台写真が見たい! とりあえず、青果全集で脚本を読んで、気を紛らわした。「演芸画報」掲載の岡鬼太郎の劇評のタイトルは「唐人と江戸ツ児」。同時に上演の弥次喜多に思いを馳せるのもたのし。木村錦花を思い、中村哲郎『歌舞伎の近代』(岩波書店、2006年6月)を3年ぶりに読み返して、夢中になったりも。……これにかぎらず、若き日の戸板康二の観劇を追って、ひさびさにいろいろと演劇書を繰って、たいそうたのしく、まだまだ余波が続いて、もう11月だ。


『名優のごちそう』には収録されていないのだけど、『みごとな幕切れ』(三月書房・1990年8月)所収の、『回想・新派十二人』(初出:「演劇界」1989年1月から12月まで)は、演博で開催中の《新派展》をじっくりと見物したあとで読みふけってみたら、含蓄たっぷりでとてもよかった。興奮のあまり、再訪して、ますます興奮。新派展については、いずれじっくりメモしたいのだった。