歌舞伎座で芝居見物のあと、東京會舘で喫茶。「ガトーアナナ」を買って渋沢秀雄をおもう。


いつもと同じ時間に起きて、諸々の家事を済ませたところで、ラジオのスイッチを入れると、ちょうど「音楽の泉」が始まったところ。本日の曲目はモーツァルトの弦楽五重奏曲 変ホ長調 K614。モーツァルトの弦楽五重奏でこの曲が一番好きなので、思いがけなく聴くことができて大喜び。じっくりと耳を傾けながら、ゆっくりと身支度を済ませて、音楽が終わったところでイソイソと外出。有楽町線を新富町で下車して、京橋図書館でゴッソリと本を借り出して、タリーズでコーヒーをすすりながら、次々に繰る。


午前11時前。歌舞伎座の3階席へゆく。今日もオリエンタルカレーの人形の前を通りかかって、しばし立ちどまって眺める。菅原の『加茂堤』は2002年の通し上演以来。梅玉の桜丸がバッチリはまっていて、よかった。30分の幕間のあとは、今日の観劇はこの瞬間のためにあったのだという感じの15分間、吉右衛門の石川五右衛門。ふたたび30分の幕間のあとは、玉三郎の『女暫』。横溢する歌舞伎気分に口をポカーンと開けて、何も考えずに舞台に身を任せるひととき。今日の観劇のような、リラックスして劇場の椅子に座るというのは実はひさしぶりな気がする、こんな感じの芝居見物をわたしは長い間忘れていたような気がするなアと、そんな芝居見物を満喫だった。

 

午後2時。三部制ならではのコンパクトな観劇もそれはそれでいいものだなアと、機嫌よく外に出て、銀座の人混みを横切って、ズンズンと御濠端に直進して、ひさしぶりに東京會舘のカフェテラスでコーヒーとアイスクリーム。春の風にざらついたノド越しにアイスクリームのなんと心地よいことよ(詠嘆)、などとしばし休憩のあと、次から次へと図書館で借りた本を繰ってゆく。そんなことをしているうちにあっという間に夕刻。渋沢秀雄がエッセイに、東京會舘の「ガトーアナナ」というお菓子のことを大好物と書いていたのをふと思い出して、売店で物色してみたら、バッチリ売っていて、大喜び。コンパクトな525円のものをお土産に買って帰る(正式サイズは2620円)。